相続実績 1 (単純承認)
「果たして、相続財産はそれだけ?」・・・単純承認
知人の紹介で相談を受けたS子さん、1枚の紙片を持参していた。
大手都市銀行の「相続届」である。
そして、S子さん、「叔父から、この紙に住所氏名を書いて、実印を押し、その印鑑証明書を取って欲しいと言われたが、その通りしていいのでしょうか。」
なぜ叔父か、ここで、S子さんの相続関係を説明しておかなければならない。

被相続人の長男が、S子さんに銀行の「相続届」を渡し、記載、押印、印鑑証明を依頼してきたのである。
S子さんからすれば、弟と共に祖父の遺産を相続することになるのである。
そこで、S子さんに問う。「遺産は、その銀行預金だけですか。」
その答は、「叔父は、祖父が建てた3階建てのマンションの一室に祖母と二人で住んでおり、他にもかなりの預金があるはずです。」
「それでは、取りあえず、その書類を叔父さんに渡すのは、見合わせなさい。そして、叔父さんの連絡先電話番号を教えて下さい。」
こうして、その番号に電話をして、叔父なる人物に、これまでの経緯を説明し、「相続手続を進められるのなら、すべての相続財産を明らかにしなければ、前には進みませよ。」と伝えておいたところ、それから10日ほど経っても、叔父氏からは何らのアプローチもない。そこで、再度の電話をして、「何でしたら、一度お伺いしましょうか。」拒絶されるかと思いきや、「そうしていただけますか。」との返答。日時を打合せて、大阪市内の高級住宅地と称される、その住居マンションの所在を確認した。行ってみると、そのマンション、一階は、道路に面して二店の店舗が入り、2・3階が計8室の賃貸マンション。恐らく、賃料収入は、月額100万円は下らないであろう。と見て、母子の住む2階の一室を訪れる。案内された部屋には仏壇が祭られていたので、合掌。そして、振り返った机の上に一枚の紙片、見ると銀行預金、郵便貯金、国債、土地家屋など積極財産と幾許かの銀行からの借入金の残高、これらが、達筆というわけにはゆかないが、整然と判りやすく書かれてある。合計が書かれてあり、1億円にあと少しで届くという金額である。それを預かり、S子さん兄弟と話をして、できるだけ早く印鑑証明書等を準備する旨約して辞する。
この叔父氏がこのように総ての遺産をさらけ出してくれたことをうれしく思い、できれば、預金関係相続分に上乗せして、不動産には、S子さん姉弟の持分登記をしない方向で遺産分割協議書を考えようと思っていたが、S子さん、相談する相手があってのことか、総ての遺産を法定相続分欲しい、マンションの賃料についても同様、とのこと。やむを得ない。こちらへの依頼者の言うことを聞かなければならない。こうして、通常、法定相続分によって相続する場合は、遺産分割協議書は不要であるが、マンションの賃料まで欲しいというS子さんのために作成した遺産分割協議書を叔父氏に示したところ、不快な表情が読んで取れたが、反対はしなかった。こうして、当初遺産約600万円の「相続届」がおおよそ、1、200万円とマンションの建物と敷地さらに年々、マンション賃料の8分の1を相続する事となったのである。